ヴァージン・スーサイズ(THE VIRGIN SUICIDE)


(1999年 アメリカ)(上映時間1時間38分)
監督・脚本:ソフィア・コッポラ
出演:ジェームズ・ウッズ、キャスリーン・ターナー、キルステン・ダンスト、
ジョシュ・ハートネット、マイケル・パレ、スコット・グレン、ダニー・デヴィート
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<ストーリー>
リスボン家の美しい五人姉妹のうちの末っ子セシリアが、ある日自殺を図る。
命は助かったものの、その後ホーム・パーティーの夜に2階の窓から飛び降
り、今度こそ帰らぬ人となった。残された家族は悲しみにくれるが、しばらく
すると表面的には普通の生活に戻る。姉妹のうちのラックスは、トリップ・フォ
ンティンという男の子から思いを寄せられ、ダンス・パーティーに誘われる。
そして、姉妹全員が同行することを条件に両親の許可をもらうが、ハメをは
ずして朝帰りしてしまう。それに激怒したミセス・リスボンは、姉妹たちを家
に閉じこめ、学校に行くことすら許さなくなった……。

<レビュー>
娘5人が次々に自殺した一家の物語。
うぅぅぅ〜、悲惨だわぁ〜。いったい何があったのかしら?

てなわけで、普通なら、涙ボロボロの悲劇か、謎解きのサスペンスになり
そうな素材。
ところが、ソフィア・コッポラ監督は、それをみずみずしい青春ドラマに仕上
げてしまったんですねぇ。

冒頭まず描かれるのが末娘セシリアの自殺未遂。
続いて、精神科医のアドバイスによって男の子を招いたホーム・パーティ
ーを開いた夜に、今度こそ本当にセシリアが自殺してしまう

その後、しばらくして姉妹は元の学園生活に戻る。
だが、ラックスがトリップという男の子に思いを寄せられたことから、再び
波乱が起きる。
ある晩、彼女がダンス・パーティーに行き朝帰りしたことから、母親が激怒
して姉妹を家に閉じ込めてしまったのだ。

ちょっとしたご乱行が母親の怒りを買い、家の中に閉じ込められてしまった
姉妹。まさにカゴの鳥状態だから、落ち込むのは当然。それが引き金に
なって集団自殺してしまったわけ……。

自殺というショッキングな事件を除けば、1970年代のティーンエイジャーの
生活や心理が、それなりに生き生きと描かれている。
プレーボーイのはずのトリップがラックスにメロメロになる姿や、ダンス・パー
ティーに行く時にラックスが下着にトリップの名前を書く場面など、その年齢
の子供たちのようすが巧みに描かれていて、思わずニヤリとしてしまう。

また、家に閉じ込められた姉妹と、彼女たちを気にかける近所の少年たちが
電話越しに音楽で会話をするシーンも印象的だ。
当時の音楽が効果的に使われているのもこの映画の特徴ですね。
周囲の男たちの回想という形にしたのもウマイと思うし、映像もなかなか美し
いです。ハイ。

ただねぇ、やっぱり5人姉妹全員が、自殺するというショッキングな出来事
が大きすぎるんだよね。
それを徹底的に追いかけるんじゃなくて、ただの青春ドラマのネタとして使
っているだけって感じなんだなぁ〜。
だから、なんか物足りないの。 (´ヘ`;)

最初にセシリアが自殺未遂した時に、精神科医が「まだ人生の辛さも知る
年にもなっていないのに」と諭すと、彼女は「でも先生は13歳の女の子に
なった事はないでしょ」と言う。
この程度なんだよね。セリフとしちゃなかなか面白いけど、自殺に向かう心
理には全然突っ込んでない。

まあ、あえてそうした構成にすることで、彼女たちの自殺を特殊化せず、「
十代の不安」「大人との微妙な隔たり」といったティーンエイジャー特有の
心理に普遍化させている……なんて深読みもできないわけじゃないんだ
けどサ。
それにしてもねぇ〜。

最後のほうで、少年たちが姉妹を救おうとするのだが、彼女たちは結局死
を選んでしまう。
そのあたりの心理もよくわからない。
別にキチッと落とし前をつけろって言うんじゃないけど、多少はコッポラ監督
なりの解釈を匂わせて欲しかったゾ。そういうのが全然感じられないんだもん。

「あんたたちにも十代の頃があったんだろ? だったら、そのへんの雰囲
気は何となく感じ取れ〜!!」ってわけじゃないでしょう?
忘れたよ。んなもん。だいいち、女の子の心理なんか男の子にはわからん
じゃないかッ!

というわけで、青春の輝きと挫折を新鮮なタッチで描いたこの映画。
だけど、全体として見れば、欲求不満がズンズンと募る映画でもありました。

ちなみに、この映画は原作もので、「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」
(早川言房刊)の映画化。ただの青春ものではなく、こういうヒネッた素材を選
んだフランシス・コッポラ監督のセンスは買うけどね。父親の七光りで、ヘタ
な役者やってるよりはまだ監督のほうがマシかもネ。

《ぽちのオススメ度》
★★☆☆☆
(ティーンエイジャーの、それも女の子の心理はよくわからん! そんな僕に
もわかるような映画をつくってチョッ!!!)

*ビデオにて鑑賞


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